何が起きても焦らない方法
剣術の技「後の先」
私が習う剣術の流派は、基本的に「後の先」と呼ばれる技の仕掛け方をします。自分から先に攻撃するのではなくて、相手の動きに応じて対処する方法です。
簡単に言うと、相手が攻撃してくるのをかわすなり、受け流した後に反撃する、ということ。でも、「先」という言葉があるとおり、相手より先にしかけることが必須です。
どういうことかというと、相手が必ず、こちらの意図する方法で攻撃してくるように仕向けるのです。そのほうが、相手の動きを予想しやすく、安全に防御できる。そして、次の一手を出しやすい。
つまり、試合運びの主導権を握るのに都合がいいからです。このような方法論を、先人が残してくれた剣術の形(いくつかの攻撃パターン、防御パターンを練習用にまとめたもの)を使って、学んでいきます。
ものごとは観察することが大事
この、後の先って、けっこう日常生活でも使えます。私流の(自分勝手な)応用ですが、「自分からは動かない。」これだけ。人間って、予想外のことが起きると動揺することが多いですよね、いえ、それが普通だと思います。
私なんか、特に、そうです。で、焦って、解決したくて、いろんな方法を考えるじゃないですか。あるいは、すぐに行動をしてしまう。でも、焦っているときほど、すぐ動くと、ろくなことになりません。
なにか、ことが起こっても、まずは、ワンテンポ置いて、様子を見る、観察することが大事です。私も、単純作業的な仕事を選んだつもりだったのですが、けっこう、イレギュラーの発生が多いってことに、最近気づきました。
一人で、外に出ることが多い仕事なので、助けを求めるにしても基本、電話でのやりとり。現場では自分で解決するよりほか、ありません。やりはじめの頃は、ずいぶん、焦って、「どうしよう、どうしよう」となっていました。
しかし、最近は「なにもしなければ、なんとかなる」の精神でいくので、優先させるべき事項が自然と浮かぶようになりました(もちろん、仕事に慣れたということもありますが)。
今、どういう状況で、一番やらなければならない、大事なことは何なのか、がわかるようになるんですね。あとの細かいことは自然に解決することが多くなりました。
「自分からは動かない」と決めておくと焦らない
「焦るな」っていうと、人間、余計焦るでしょ?でも、「とりあえず、自分からは動かない、なにもしないよ」って、決めておくと、状況観察する余裕ができるので、剣術と同じで対処がしやすくなるんです。
剣術の場合は、あらかじめ、意図して安全に、相手に攻撃を出させますが、仕事に置き換えれば、いろんなトラブルを予想しておくことが、「先」につながるかもしれません。
あと、人間関係なんかでは、私みたいに、孤独が比較的好きな人だと、同僚や上司との無駄話がつらかったりします。いえ、話に興味があって、盛り上がれば楽しいんですけれど、けっこう、どうでもいい話ってのが苦手で、世間話に苦労するたちなのです。そんなときは、無理して自分からは話そうとしません。
話題がなければ、ないで、よいのです。そうしていると、逆に、相手の方が気まずくなってしまうのか、話を振ってくれたりします。沈黙が嫌いな人って、けっこういますよね。でも、それで気をつかって疲弊するなら、自然体を貫いている方がよっぽど楽ですし、自然体だからうまくいきます。
また、最近ですと、はじめのほうの記事でも触れましたが、つきまとい行為をされたときにも、後の先が役立ちました。相手の方が予想以上に執念深い人で、苦労しましたが、それでも、自分からはなにもしないことを貫きました。
場数を踏むうちに、相手はいったい、なにが狙いなのかが納得できたので、徐々に、放っておくことが可能になりました。で、数年後に解決、というよりは、自然消滅した感じです。
私の場合は、たいてい、なんちゃって「後の先」です。自分から動かないのは得意なのですが、「先」(先にしかける)ができてないです。動かないまま終わってしまうことも多いのですが、稽古し続けていくことに意味があるのです、たぶん。私の剣術はからっきしですが、先人の考えが垣間見えて、大好きです。これからも、精進します。