「ひろさちや」さんに感謝

先日、宗教評論家の「ひろさちや」さんがご逝去されたことを、新聞で知りました。享年85歳。個人的には、もう少し、ご活躍されて欲しかった方です。本当に残念でした。

たまに、メディアにも出ていた人なので、もしかしたら、お名前ぐらいは耳にされたことがあるかもしれません。

いい加減に、なんだっていい

ひろさんは、仏教の教えをわかりやすく説きながら、「人生、そんなに堅苦しく生きるな。もっと気楽に、もっといい加減に生きていいんですよ」と常々、ご著書や講演を通して提唱されてきました。

今でこそ、「気楽に生きよう」という主張は当たり前のように聞くようになりましたが、ひろさちやさんはその先駆けみたいな人だったと思います。

ひろさんのご著書との出会いは、20代後半。仕事も続かず転職ばかりで、人付き合いも苦手。そんな私に「正解」をくれるものはないかな?漠然とした不安や不満を胸に、休日は大型書店で過ごすようになっていました。

立ち止まる本棚は、自己啓発とか宗教とか、そういう類の本が並ぶところばかり。ひろさんの本も、その一つでした。

初めて、その語り口を目にした時は、本当に、一筋の光が見えた、と思いました。「そうだ、こういう生き方でいいんじゃないか!なにを、そんなに急いで、生きる必要があるんだよ?」

以来、1か月に一度は、書店でひろさんの著作を何冊も買い込む自分がいました。ひろさんの主張は、どの著作を読んでも一貫していました。

いい加減に(良い加減に)。

なんだっていい。

だいたい、この2点で完結されています。もう頑張って生きるな。どんな生き方だっていいんだ。引きこもりだって、ニートだって。そんなもの、治そうとするな。そのままの自分でいいことに、気付け!

ひろさんは、大学院でインド哲学を学ばれ、仏教にとても造詣が深い方でした。そういう方が誤解を恐れずに、何度も、何度も、繰り返し、仏の教えも、そうなのだと言うのです。

当時、お坊さんからそんな説法は聞いたことがありませんでした。今や、お坊さんは昔と違って、普通に、俗世で暮らすことの方が多い。

だから、もはや、坊さんは、坊さんの役割を果たしていない。「仏教界の怠慢だ!」と、強く憤っておられたのが印象的でした。

お坊さんは、普通の、世間一般の価値観で、ものを説いてはいけないのです。ニート、引きこもり、不登校を治して、社会に復帰させることに同意する。自分の性格を治す…?冗談じゃない!

なんで、「そのままの自分でいいんだ」と言ってあげないんだ!どうして、社会に合わせる窮屈な生き方に矯正する必要があるんだよ?

ひろさんが「仏教原理主義」を標榜したのがよくわかります。

釈迦は、今でこそ仏教開祖として崇められていますが、元々は、社会から脱落して、社会から離れた生き方があることを、身をもって示してくれた人です。

※(余談ですが、ひろさんは、「私たちに真理を示してくれた釈迦は、人間ではない」という立場をお取りになっていましたが、私は、この辺は、正直、どちらでもいいと思っています)

もし、本当に、仏教を理解しようとするのなら、社会に合わせること、みんなと仲良くするなど、「常識」と呼ばれるものこそ、「本当にそうなのか?」「それを、今、目の前にいる人に説いたところで、その人は救われるのか?」という視点が大事だ、と。

この考えに触れた時、なんとなく、論理的にむずかしく感じていた仏教を、本当に身近に感じることができたし、ほんの少しだけど、理解するためのヒントをもらったような気がしました。

なんだっていいから、生きるんだ。頑張らないで、いい加減に生きるんだ。お寺の中央にいらっしゃる仏の微笑みを見るたびに、そう感じています。神社に行った時だって、そう感じていますよ。

なんといっても、日本は、神仏習合の国ですから。日本の神様だって、きっと、「なんだっていい」と言ってるに違いありません。

ほとけのはからい

もう一つ、ひろさんのご著書でよく聞いたフレーズがありました。それは、「仏のはからい」という言葉。つまり、人生は、自分が思うような人生で進むとは限らない。だから、全て、仏様におまかせしとけばいいんですよ、っていうこと。

ここでは、仏だけでなくて、「真理」とか、「神様」とか、「宇宙」とか、自分がしっくりくる言葉に言い換えていいと思います。つまり、人間ができることなんて、大したことない。安心して、仏様にお任せしときなさいよ。

なんとも、やさしく、心強い言葉です。そうか、別に、自分でなんとかしようとしなくても、なんとかなるんだなあって、いう今の考えの下地は、この時にできたと思います。

ひろさんは、私の哲学(と、言えるほどのものでもないけど)に非常に大きな影響を与えてくれました。世間とは違った生き方がある。そんなレールから外れてしまえ!

融通のきかなかった自分を、ここまでいい加減にしてくれた(もちろんいい意味で)のはひろさんです。感謝でいっぱいです。ただ、スピリチュアルにハマり始めた頃から、だんだんと疎遠になっていました。

あれから、ひろさんの哲学に、何か、変化はあったのか、ちょっと、気になっています。近々、また、ご著書を手にとってみようと思いました。

ファンタジックですけど、阿弥陀様や、お釈迦様、そのほかの大勢の仏さまの隣で、にこやかに、談笑されているひろさんの姿が目に浮かびます。心より、ご冥福をお祈り申しあげます。

ありがとうございました。

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